テールリスクの時代 2011 7 31
書名 通貨戦国時代 円高が続く本当の理由
著者 小口 幸伸 朝日新聞出版
なぜ、円高が続くのか。
その理由を、他の本では、あまり書かれていない視点で説明しています。
(以下、引用)
3 通貨戦争の核心 米中の戦いと戦略
通貨の不平等性
通貨戦争の議論を進める前に、
まず通貨の世界の不平等性を頭に入れておく必要がある。
通貨の世界では、ドルが圧倒的な力を持っている。
世界の外国為替市場で取引される為替レートの9割近くは、
ドルが絡む。
ドルが絡まない取引は1割強に過ぎない。
これは、どういうことを意味するのかというと、
為替レートの変動は、ドルの影響が最も大きく、
ドルとの関連性で他の通貨の価値が決まっていくということだ。
(中略)
ちなみにユーロ絡みの為替レートの取引は全体の4割を占め、
円絡みは、2割程度だ。
為替レートの変動に対する影響度も、だいたい取引量の割合に比例している。
したがって、仮に、米国と日本で、経済に同じような悪い材料が出た場合、
為替レートに与える影響はドルの方が強いので、
ドル円レートは、ドル安円高に動く。
(以上、引用)
テールリスクとは、著者によれば、
「統計上、発生する確率は非常に低いが、
発生した場合は、大きな損失につながるリスクのことだ。
通常では起こり得ないと考え、備えることをしないことが多い」という。
通貨の世界にも、テールリスクは存在するかもしれません。
一方でドル安に誘導し、一方で、そのドルに自国通貨を連動させる。
これは、持続可能なものではありません。
ひと時の夢を見ているようなものです。
いつかは破局の時が来るでしょう。
ニュースでは、円相場が史上最高値を更新するのではないかと言っていますが、
著者によれば、「世界では史上最高値を更新している通貨が、たくさんある。
多くの通貨が史上最高値を更新するという状況は普通ではない」と指摘します。
ドルの洪水の中で、そのドルに自国通貨を連動させる。
「洪水」も「連動」も持続可能か。